「それでも人は、「境界」を超える」展

つつじ

6月に開催する予定のグループ展の打ち合わせを兼ねて、美術館に集まることになりました。私はちょっと人と接するのが億劫になっていて、連絡はしたけれど結局1時間も遅刻してしまいました。
当日都合がつくメンバーは美術館の前で私が来るのを待っていてくれました。本当に申し訳なくなりましたが、気分がぐずぐずとして視線が定まらず、あまり調子が良くなかったのです。
私が到着するとすぐ、展覧会のポスター用の写真を美術館の階段で撮影しました。夕日が逆光で階段を照らす中、メンバーが思い思いの場所に立ち、数枚の集合写真を撮りました。全身が写ってしまうので、もっと痩せている時に撮影できたら良かったのに…と思いました。
その後、搬入搬出時間や展示方法などの説明などあり、他のメンバーは先に観ていた展覧会を見て、会場の確認をしました。
現在、初公開!「賛美小舎」上田コレクション―夫婦で集めた愛しの現代美術―それでも人は、「境界」を超える。という展覧会が開催中でした。
教師である上田夫妻の現代美術のコレクションが展示されていました。ファインアートと異なり現代美術はコレクターも少なく、このような個人が現代美術を支援していることは素晴らしいことだと思います。
今回の展示では、コレクションの中から、日本画の素材を用いながらその表現方法で日本画の境界を超える作品が目立ちました。作者には私が研究室時代にお世話になった先輩や後輩もいて、この世界で活躍していることを嬉しく感じ、逆に自分の立場を考えてしまいました。
展示を見終わったら、残ったメンバー(男性ばかり…)と懇親会を兼ねた飲み会に行きました。初対面の方ばかりで、しかも女性はみんな帰ってしまって心細かったのですが、男性陣でプロレスや憲法構造改革やいろいろな話題で盛り上がってくれてたので、私は比較的のんびり過ごして、途中で失礼しました。話題にはついていけず、理解できないこともあり、相変わらず気が利かない状態でぼんやりしていたのですが、酔わなかったし安定剤を飲まなくても辛さが我慢できたので良かったです。
帰路、発表まであと2ヶ月もないことに焦りを感じました。

わたしの中の灯

新宿の空

連休の最初の土曜日、健診結果の説明のための面談をクリニックに予約していた。
午前中の晴天から一転、激しい雷雨になった午後、都心にあるそのクリニックへ再び向かった。サロンのような豪華なあのクリニックだ。
循環器の医師が担当と言う事だったが、名前を呼ばれて診察室に入ると、3月末の健診の時問診をした、あの紹介状の医師だった。先生の方も私を覚えていたらしく、「やあ、どうも」といきなりフレンドリーな対応に少し戸惑ってしまった。
「やっぱり雑音がするのが気になるんですよね」と先生は他の検査結果は殆ど見てない。
「あの…不整脈は、主治医の先生から、お薬の影響もあるんじゃないかと言われたんですけど…」と私は少し自信なく話し始めた。
「いや、そっちの心は僕は診ないからね、心は心でも心臓の方。ちょっと胸診ましょうか」
私の申告は軽く冗談で飛ばされてしまい、聴診器で診察が始まってしまった。今日は面談じゃなかったっけ?
「う〜ん、やっぱりほんの少し聞こえるねぇ。心配するほどではないけど、一応心エコーやりますか?時間あります?じゃ、少し待って4時から20分くらい。また来るの面倒でしょ。ちょうど雨も降ってきた事だし雨がやむまでね」
いきなり、検査することに決まってしまった。看護師さん慌ててスケジュール確認。検査技師さんは苦笑い。「先生は気が早いからねえ…」
待ち時間、血圧と脈拍を測ってみた。まだ高い。どうしてだろう。風邪は治ったのに。
再び名前を呼ばれて検査室へ入り、準備してベッドに寝ていると、検査技師さんが心電図のセットをして身長体重の入力。そのまま検査かな?と思ったらさっきの先生が入ってきてびっくり。え?先生が検査するの?後の患者さんどうするの?なんか先生、すごく楽しそうなんですけど…。
左向きに寝て左胸に超音波をあてる。医師はベッドの右側に座ってモニタは右側。「寄りかかっていいですよ〜」と言われるがなんか変な体勢だ。私は医師に背中を向けているのでモニタは見えないのだけれど、「見て下さい、これがあなたの心臓。これが弁、ちゃんと動いてますよ」と言うので首を回してその画像を見る。画面に規則的に動く物体が見える。これが私の心臓…初めて動く自分の心臓を見た。
「脈早いですね」とまた言われる。「なぜでしょうね」と私が尋ねると「病院だからじゃないですか。こんな雨の日に検査しにきたりするから」(検査は今日突然決まったのだけどな)
しばらく検査は進む。医師はなにかしきりにキーボードを叩いている。
「ああ、やっぱりありますねえ。見てください」と言われ振り返ってモニタを見るとモノクロだった画面に色がついている。「この赤いのが動脈にいく血で、ここが弁、この青いの、収縮した後ぱっとこっちに逆流するの、わかりますか?」動画で見ると、心臓が動くたび弁から血液が送られた瞬間、ぱっと弁を逆流する僅かな青色が規則的にちかちかと見える。
「雑音が聞こえると言ったでしょう、でもこの程度なら問題ないです。聞こえちゃうんだよね。安上がりというか…ははは」先生、とても楽しそうなんですけど。
逆流?って私の心臓壊れてるのか…とふと不安になったけど、これはエコー検査で発見される生理的な弁逆流なのだそうで、トライアスロンみたいな過激な運動をするなら別だけど日常生活には全く問題ないそうだ。
聴診器ってあんまり聞こえないという話を医師のブログで読んだことがあるのだけれど、循環器を専門に診てると耳がきくのだろうか。「聴診器で分かっちゃうなんてすごいですね」とちょっと先生おだてて見た。先生うれしそうに「普段小児の患者さんや重症の患者さん診てるとね…聞こえちゃうんだね。耳が良くて困っちゃうね。職業病だねぇ。でも、これは別に問題ないですからね」先生、調子よくなってきた。
多分、このクリニックにはバイトで来ているのだろう。クリニックの入り口に掲げられたこの医師の経歴には某大学病院の名前があった。普段は心臓血管外科医として困難な症例を診ているのだろう。健診が専門のクリニックでは受診者を患者様とは呼ばずお客様と呼ぶ。医療を必要としない人が大多数なのだ。わたしもその中の1人で、医師は健康な心臓を見て息抜きでもしてるのだろうと思った。
検査はまだ続く。「別に問題はないですが、僕の趣味で全部診ておかないと気が済まないんですよ。気にしないで下さい」その間もときどき画像の説明をしてくれた。
検査には30分近くかかってしまった。先生、満足したように画像のプリントをぶら下げて、「特に問題ないですよ。ただ、1年後フォローアップはするようにね」と言ってやっと終了。
なんとなく、医師に遊ばれたような気がしなくもないが…
でも、初めて見た動く自分の心臓にちょっと感動してた。自分の心音が流れる。鼓動と共に血液が押し出されていく音…。逆流する音がどれなのかよく分からなかったけれど、思ったよりざらざらした音。これがわたしの音なのか。絶え間なく動く私の心臓。ほんの僅かに逆流してるけど「ちゃんと生きてますよ」と身体から言われているようで、不思議と癒された。
私は今まで独りぼっちで真っ暗な中にいて、誰も助けてくれないような気がして寂しかった。
心療内科の主治医は独りでいる時癒されるとあるエッセイに書いていた。それは独りであっても、傍らには誰かの灯があるからこそ安心して癒されるという事を書かれていたのだけれど、私には傍らの灯が見えないから辛いと思っていた。
でも、今日、自分の中にも灯があるのだと感じた。心臓が動いている。休みなく鼓動を打ち続けるのを見て私は生きていることを実感した。私は独りだけれど、私の中の灯が点っている。
こころが悩み頭だけでものごとを考えてきたけれど、その間もからだはわたしを生かしつづけてきた。からだがわたしに話しかける。「大丈夫、生きているよ」
こころとからだが離れていたからこそ、自分の灯を感じることが出来た。
検査が終わった後、来月から通うことになる精神科クリニックへ下見に行った。細い路地を迷いながら辿り着いた場所は、思ったより古くて小さなビルだった。
雨は上がり、日は暮れて、そのビルの3階から洩れる柔らかい光を見上げた。
今日の気持ちを来月の初診の時、主治医に話してみようと思う。独りでも癒された不思議な気持ちを…。

カルテの厚み

マーガレット

今日は、会社を休んで消化器内科と心療内科の2科受診でした。そして、心療内科の主治医のこの病院での診察最後の日です。
先に予約してあった消化器内科を受診しました。昨日から下血が始まっている事を話したら、久しぶりにリンデロン座薬が処方されました。珍しく腹痛もあることもあり、炎症反応を見るため血液検査の指示がありました。
下血の理由は分かっていたので、この後主治医に会ってお話すれば軽快するだろうとは思いましたが…。
消化器内科の担当医は、先日の腎臓内科のカルテの記載を見て、少し驚いていました。検査結果を見て、「なんともなかったのね。でも炎症が少しあるか…」とぶつぶつ言っていました。
様子を見たいということで1ヵ月後受診になりました。
消化器内科の受診後、一応予約はとっていたのですが、心療内科の受診順を受付に聞いたところ、なんと私は最後になっていました。看護師さんが、「今日は○○先生の最後の日(予約なしの)なので普段の3倍の人が来てるんですよ。もし近くにお住まいなら一度お家へ戻ったらいかがですか?お昼も済まされても多分まだまだかかると思います」と言われてしまいました。
家に帰れないこともなかったが、ぼんやりと夫がリビングに居るのかと思うと気が進まなかったので、とりあえず、お昼を病院内の喫茶店で済ませることにしました。
思えば初診もやはり水曜日でした。今日の様に大変な混雑の中で、当時の私は心理テストが手につかないほど疲労していました。初めて主治医と出会った時は、女医さんで良かったと思いました。初診では体の不調を訴えるだけで、主治医に対してこころを開くことはまだ出来ませんでした。治療してもらえるのかすら懐疑的だったと思います。こころの病気は自分が治ろうとしなければ治癒しないことも知らずに、ただ、この苦しみを何とかして欲しいと、それだけ話したように記憶しています。
そんな昔の話を思い出しながら、他の患者さんも先生と共に過ごした日々の積み重ねに様々な想いがあるのだろうと思いました。主治医はこの市民病院に20年近く勤務してきたのだろうと思います。昔は地域連携もまだなくて、患者さんが溢れて今よりも大変だったと聞いています。先生も患者さんも最後の診察ではきっといつもとは違う感慨のようなものがあるのではないか、それで時間もかかってしまうのだろうか…などと考えて私も少し感傷的になっていました。
結局、消化器内科の診察が終わってから、4時間待ちになりました。
やっと名前が呼ばれて診察室に入った私は、大量のカルテの山から私のカルテを引っ張り出している主治医を見て、今までの感傷的な気分も吹っ飛んでしまいました。
私のカルテの厚み、そして他の患者さん達のそれぞれのカルテの厚みが、主治医と患者の長い長い心の交流の歴史を物語っているように思えました。
診察は明るい雰囲気で始まりました。
私は会社で人事異動と退職者が出て仕事が量的に多くなり、限られた時間内でこなすのに神経も体力も使い果たし、夜はぐったりと疲れて寝るだけの生活になっていることを話しました。そして、社員にしか許可されていなかった仕事も引き受けざるを得ず、緊張してストレスがかかり、下血が始まってしまい、本当にわかりやすい体質です、と話して笑いました。主治医も一緒に笑ってくれました。
もともとその仕事は荷が重いのでやりたくないと以前から話していたのです。ますます医療へ近づいていく私を、主治医は距離を置いて見守ってくれているように感じました。
さらに笑い話は続きます。腎臓内科のカルテには主治医も「はて」、という表情をして目を通していたので、「健診の先生が…」と事の発端を話し、腎臓内科の先生が怒ってしまった事も笑って話せました。主治医も笑いながら、「でも何事もなく良かったですね」と応えてくれました。
それから健診の結果が出て、不整脈が見つかったことや乳腺の石灰化が見られたことなど一通り報告して、週末には循環器の医師に結果説明を受けるという話をしました。私は循環器の不調についてそんなに自覚はなく、多分、腎臓の検査と同じように何でもないと思うと言うと、主治医は、「不整脈は服用している薬のせいもあると思うので、担当の先生にお薬の種類を話しておくといいでしょう」と助言してくれました。
診察は和やかに進み、処方箋の発行の段になって、主治医はちょっと固まってしまいました。「クリニックのパンフレットってお渡ししましたっけ?」「いただいてます。昨日予約しました」と言うと、主治医はほっとした表情になりました。今日、異動されることを伝えた患者さんもきっといたのでしょう。来月にはこの病院に先生がいないことを突然知らされた患者さんの驚きはいかばかりかと思いました。
「じゃ、それまで乗り越えて下さいね」と主治医は微笑んで、私も笑って処方箋を受け取りました。
初診の頃、こんな風に主治医と楽しい和やかな診察が出来るなんて想像も出来ませんでした。長い時間が、信頼関係を築いてきたのだと思いました。
診察室を出る時、今までの診察のやり取りの断片がわあっと浮かんで来たのですが、もう時間が押していました。一言だけ「先生、今週で最後ですね…」と言葉をかけました。主治医はカルテの山を気にしながら「金曜日までですが、バタバタしております」と楽しそうに答えました。私は「お疲れ様でした」と言って頭を下げ、診察室を後にしました。
今週、先生の担当された全ての患者さんが、感謝を込めてこう思っているはずです。
先生、本当に長い間、お疲れ様でした。そして新しいクリニックでの臨床と大学での教育や研究にますますご活躍されますようにお祈りしています。
新しいクリニックでもよろしくお願いします…。

開業おめでとうございます!

このブログでもお世話になっている違った視点で眺めてみよう!のk-naruwo先生こと黒崎成男先生が、この4月3日(大安吉日)、群馬県高崎市中泉町に中泉メンタルクリニックを開院されました。おめでとうございます!
クリニックのブログも開始されました。中泉メンタルクリニック
クリニックにありがちな無機質な冷たさのない、誰かのお家にお邪魔したような感じの、温かい穏やかな雰囲気が感じられます。
お近くにお住まいでクリニックをお探しの方、ブログにご案内がありますので、候補にしてみてはいがかでしょうか。
黒崎先生、どうぞお体を大切にしながら、新しいクリニックでご活躍されますようお祈りしております。皆さまもどうぞブログへ訪ねてみてくださいね!

今年も満開です

姫りんごの花

今年も大家さんの庭の姫りんごの花が咲きました。桜より白っぽい花は上を向いて元気よく咲いています。
野鳥もたくさん飛んできて庭が賑やかです。やっぱり例年より咲くのが早い気がします。
玄関を出ると満開のりんごの木があるのは、ちょっといい気分です。

緊急検査?

さくら

土日は発熱でごろごろしていて、いつものように過飲することもなく過ごしていたら、足の浮腫みがきれいに消えていた。
まだ体調が本調子ではなく、熱もあり、どうしようかと迷ったが、健診のクリニックの医師が、「月曜日にでも検査を」と言われたのが気になり、会社に電話して半休を申し出、かかりつけの市民病院へ紹介状を持っていくことにした。
紹介状を持っていつもの病院へ行くのは久しぶりだったが、普段の初診手続きと違い、いきなり地域連携室という所に行って直接関連の診療科に紹介されるので、待ち時間が若干短いような気がした。
紹介状の内容はきちんと見なかったのだが、どうも健診クリニックの医師が気を利かせて「急性腎炎の疑い」と書いてくれたらしい。
私はいきなり緊急検査を指示され、採血と検尿、心電図と胸部X線を受けることになってしまった。まだ具合が悪かったので、また検査であちこち行くのは正直しんどいと思った。
心電図ではまた看護師さんに「胸が苦しくないですか?」と言われた。また心拍数が高かったらしい。地下のX線撮影したフィルムをもらってやっと結果が揃い、再び内科受付へ。
それからしばらく待たされた。私は風邪の診察を呼吸器科で受けたいと思っていたのだが、待っている間に受付時間が過ぎてしまった。まだ微熱があるし、少し咳も出て苦しい。
やっと名前を呼ばれて中待合でまた待たされた。腎臓内科の女医さんは診察室から出たり入ったりしているが、私の名前はなかなか呼んでもらえない…。
最後にやっと名前を呼ばれて診察室に入ると、聴診器で診察、足の浮腫みについて尋ねられ、今日は浮腫みがなくなっていると話して、足を見せた。普段は足首がなくなり靴がきつくなるのに、今日に限って浮腫みがない…。
「腎機能は正常ですよ。大丈夫です!」腎臓内科の担当医は怒ったように言った。
「紹介状の先生が何で急性腎炎と判断されたのか、私には理解できない!」と怒りをぶつけられて困ってしまった。多分、検査を早くしてもらえるよう、気を利かせて書いてくれたのだろうと思いながら、派遣の健診の時に足の浮腫みの相談をした事。かかりつけの病院で腎機能の検査を受けるように言われて、こちらの病院宛てに書いていただいたことなど話した。
担当医は、尿検査の結果が出ていないのに「急性腎炎」と診断することはありえない!と怒りがピークに達していた。私は火に油を注がないよう、おとなしく先生の話を聞くだけだった。
それから、少し落ち着いてきたのか、私の家族の病歴を尋ねられたので、そのまま話すと、「大変でしたね…」と少し怒りが収まった様子になった。私の既往歴をカルテから読み、急に太ったのは心療内科の薬のせいであると思われることや、発熱は潰瘍性大腸炎の症状ではないかと言われた。足が浮腫んでいたら利尿剤を出そうと思ったが、大丈夫そうなので、次回消化器受診の際に浮腫んでいたら利尿剤をもらって下さいとの事だった。
最後に、なぜか「やっぱり赤い便が出たりするんですか?」と尋ねられたので、「今は緩解しているので大丈夫です」と答えたけど、潰瘍性大腸炎の患者って今も珍しいのかな?なんか唐突な質問で戸惑ってしまった。
紹介状の先生へ返事を書くと言うので、その内容が気になったが、それを受け取りそのまま投函した。辛らつな報告が書いてあるのではないかと思うと、検診医の先生がちょっと気の毒に思えた。
後で考えると、笑い話だけれど、その時は具合が悪くて午後出社する気力もなかった。
会社に電話して、欠勤することを申し出て、そのまま家に帰った。
夫はメールで「薬を買いなさい」と言ってきたので、その辺のドラッグストアで適当に風邪薬を買って飲んだが、効いている感じはしなかった。
とりあえず、腎機能は正常で良かったけれど…。

派遣の法定健診

ラナンキュラス

派遣社員にも健康診断が義務付けられている。健診期間は生まれ月で概ね決まっていたが、私は父の入院もあり、健診をしないでいた。当然、営業さんから電話がかかってきて、健診を受けて下さいと言われてしまった。普段から毎月通院のために会社を休んでいるのでこれ以上休みを入れられない。土曜日も診療をしている指定のクリニックに予約を入れた。今日はその健診の日だ。
昨日、通勤電車の中で男性に咳をかけられて、だんだん喉が痛くなり声が出にくくなっていたが、今日は寒気もするし、なんだかだるい。
それでも予定をキャンセルすると面倒なので、朝、採尿をし、食事はとらずにふらふらしたまま、クリニックへ向かった。
そのクリニックは近代的なビルの広々とした2階にあった。健診専門のクリニックには初めて入ったが、大画面テレビといい、革張りのソファといい、いつもの市民病院とは全然違う豪華な雰囲気に圧倒されてしまった。多分、かなり繁盛しているのだろう。
更衣室や応接室も設けられ、専門の制服を着た案内の女性が丁重かつ迅速に案内してくれる。
私は検査着に着替え、案内されるままに検査をしていった。
検査は法定健診の、身長体重、視力、聴力、検尿、血圧、心電図、胸部X線、採血、内科診察、それに婦人科健診で子宮細胞診と乳房超音波。
検査中、具合がとても悪くなってきた。血圧を測ると上が150を超える数字が出てびっくり。心電図でも心拍数が109。看護師さんから「胸は苦しくないですか?」と尋ねられた。
内科診察では、医師の問診があった。潰瘍性大腸炎の患者は珍しいらしく、いろいろ聞かれたが、今現在具合が悪いことには触れなかった。その時足が浮腫んでいて、医師に見せたら、腎機能や心臓に原因があるかもしれないとのことで、かかりつけの病院で検査してもらうよう言われた。後で紹介状を書いてもらったが、本当は風邪で苦しかった。
よく考えると、健診って体温はなぜ測らないのだろう?測ってたら今具合が悪いことが分かったはずなのに。
健診は朝から2時間ほどで終わったが、あまり食欲もなく、寒気がして歩くのも辛かったので、近くのコーヒーショップで軽く食べてすぐ家に戻った。
家に帰ってから体温を測ったら9度近くあって、その数字を見ただけでどっと具合が悪くなり、夕食も殆ど食べられずに横になった。重たい咳が出て苦しかった。夜に熱が上がって眠ろうとしてもだるくて眠れず、結局土日は何も出来なかった。
こんな状態で受けた健診結果が気になった。