距離をとること、助けを求めること

さくら

今日は夫の家族として精神科と自分の心療内科の2科受診になった。
本当は夫に受診してもらいたかったが、事前にメールで意思を確認したところ、やはり「いかない」という返事が返ってきた。けれど、保険が利くので保険証を貸してほしいと出掛けに夫に尋ねたら、何も言わず頷いたので保険診療扱いにはなった。
私としても精神科の受診は初めてになるので、少し緊張していた。
先に精神科を受診した。精神科の医師は、この病院には2週間に1度派遣されてきている。予約より早めに名前を呼ばれ、いつもと違う診察室に入った。
精神科の先生は、関西弁を使う、明るい印象の女性だった。元気が良すぎてやや気後れしてしまった。
まず、先生から自己紹介をされ、私は、夫が受診しないと言ったこと、妻の私が家族として受診することを説明した。
それから、まず夫の現在の症状を簡単に説明してから、夫について家族構成や生育歴などを詳しく話した。私が話すとそれについてさらに質問され、深く追求される。私は時々言葉につまりながら必死になって話した。
話しているうち、夫はとても人間関係に悩んできたのだということが明るみになっていった。そして私を責めるのも、他人を責めるのも、夫自身に苦しみが振りかかるのを避けるための行動であるように思えた。そして、私が初めて夫と出会った時に感じた、繊細さや頼りなさが蘇ってきた。
何故、私が夫に惹かれていったのか、その理由すら忘れていたけれど、当時私は暗闇の中にいて、毎日が地獄のようだったから、生きる力を持たない青年であっても、ただ微笑んでくれる存在が必要だったのだと思い出した。
そう、本当に刹那的に。毎日息をすることすら苦痛だった頃…。
精神科の先生は、本人が受診しないと本当の診立ては出来ないし、処方箋も出せないと言った。けれど、話を聞く限りでは、夫は統合失調症のような精神病というより、性格やあるいは発達に問題がありそうだということだった。いずれにしても、本人が生活にも困るような状態になり、自分から困ってなんとかしようと医療や行政に助けを求めるようにならないと、現状は変わらないと言われた。また、食事などに薬を入れて、本人の知らないうちに薬物療法をしたとしても、なぜ、自分が治っているのかが分からないから、治療の意味がないのだとも言われた。
私に対しては、夫を扶養したり援助するなど、このまま引き篭もり続けられるような状態を与えないよう距離をとり、本人が困るようにしむけるべきだと助言された。そうするにあたっては、保健所や市役所、入院施設のある精神病院などと相談できるよう連絡をとっておくことも大切だと言われた。
私は、先生の話すことはもっともなことだと思ったが、逆に夫の置かれた環境がどんなに苦しく孤独であるかが分かって、複雑な心境になった。
先生は途中カルテの紙がなくなり継ぎ足しながら、私の話を書き取って、メモには治療について図解して説明してくれた。非常に明快で分かりやすいと思った。
最後まで、夫を支えてはいけないと言われた。
診察は40分近くにもなり、私はへとへとに疲れてしまった。