ご家族がご病気ですか…

むらさきの菊

消化器内科の通院日。いつもなら通院日は終日休みをとっていたが、午前中の早い時間の予約だったので、午前中半休にして受診した。
早めに病院へ到着したので、すぐ順番が来た。
担当医は私のカルテを見て、「ご家族がご病気になられたのですか?」と珍しく質問してきた。「横行結腸のがんで…もう、退院しました。父です」と私は答えた。「心療内科の受診はまだ先ですか…」と何か気にしているそぶりだった。こういう対応は初めてだったので、内心戸惑ってしまった。
担当医は、心療内科のカルテも良く読んでいることは前から知っていた。私の潰瘍性大腸炎心理的な影響が強いと考えているらしいことも分かっていたが、私の家族の病気について言及されたのには、少し違和感を感じた。消化器系の疾患だったからなのかもしれないが、この医師は高齢の患者には非常に丁寧に診察をする。あるいは、高齢の父に対する何かがあったのかも知れないとその時は思った。
薬はいつもどおり。今月からは難病医療費受給券の色がピンクになった。負担なしの印だ。
病院での医療費免除の手続きが間違って出て、医療費を支払うように請求が来て、思わず払ってしまい、後から気が付いて、手続きのやり直しをしてもらった。普通に払ったら、大変な額なのだと思うと、医療券の有り難さが分かった。
重い薬袋をかばんに隠して、そのまま会社へ向かった。
ゆっくりと昼食を摂り、早めに出社した。それでも仕事は忙しくはなく、いつものような孤独感が迫ってくるのを受け止めながら、ぼんやりとモニターを見つめて時間が流れるのを待った。私が休んでも、何の影響もない職場…それはそれでストレスが少なく、自分の健康にとって良い事だと思うけれど…こんな事でいいのか、私はもっと仕事がしたいのではないのか、もやもやとした気持ちが湧いてきて堪えられなくなってくる時、定時が来る。