予定より早く

つわぶき

月曜日、午前中に、誰もが働いている時間だと言うのに、父は電話をかけてきた。私は仕事で電話に出られず、昼休みに電話するも出られず、そうして何回か時間を変えて電話をしてやっと連絡がついて、「水曜日の午前中に退院するから」と連絡があった。
父はとても元気そうだし、妹とメールでやりとりして、水曜日の退院には妹に行ってもらうことにして、私は付き添うのはやめた。予定より早い退院だった。それだけ回復が早かったのだった。
退院当日、よく晴れた暖かい朝だった。入院にかかった費用は、思ったよりも少なく、父が支払える額だったと妹からメールが入った。
お疲れ様と返信を打った。
疲れきったと返信がきた。
今回の父の入院騒ぎには、妹が一番迷惑しただろう。一番振り回されたのだと思って、気の毒になった。
父はしばらくは、仕事を休み家で養生するらしい。
私は少しほっとする。それは、父が退院したからではなくて、母の介護を父に押し付けられるからだと自己嫌悪する。
いつも週末に感じる、怒りと悲しみの混ざったような複雑な気分から、しばらくは解放される…それだけでも気持ちが軽くなるのが、辛かった。
その日、私は普通に通勤し、仕事をし、父に電話もせず、普通に帰宅した。
穏やかな一日だった。