横行結腸切除

ニチニチソウ

父の手術日。会社に休みにすることを連絡する。罪悪感が残る。何故だろう。家族の一大事なのに避けたい、どこかへ行ってしまいたい気持ちが湧いてくる。
先週末、主治医から手術の説明があり、開腹して腫瘍のある大腸を切除し、リンパ節の腫れが見られればそれも摘出するとのことだった。
父は個室に移っていた。少し心細そうに見えたが、父が気の毒だとか心配だとか、そういう気持ちは起こらなかった。このひとは、死ぬつもりはないし、そう簡単に死んだりしないのだという、悪意のようなものを含んだ確信があった。
手術は午後から始まり、3時間あまりかかった。
主治医が手術室から出てきて、切除した大腸を確認するように見せに来た。
大きな腫瘍が腸管を塞ぐように盛りあがるようにあって、周辺にポリープもあった。
妹と叔母と3人で確認したが、私は何の感想もなかった。
手術は上手くいったようであった。
しばらくして、父がストレッチャーに乗って出てきた。意識ははっきりしていて、ただ、「痛い」と言っていた。
弟に手術が無事終わったとメールを入れた。
病室に戻った父は、処置をされ、体中にいろんな管がつながっていた。
父はしきりに手術は上手くいったのか聞いていた。そして麻酔が効かない、痛いと訴えていた。
看護師に頼んで痛み止めを追加してもらった。
面会時間が終わろうとしていた。
父には妹と「手術は上手くいったから。痛いのは仕方ないから頑張ってくれ」と言って病院を出た。
遅くなったので夫に外食するとメールを入れ、妹と夕食を食べた。
食後、母に電話を入れ、父の手術は無事終わったことを話した。母は叔母に自分の病気のことを話していなかったので、そのことを気にしていた。あんなに叔母に入院していることを知られたくなかった母が、無邪気にそのことを説明してくれたか聞いてきた事が、少し寂しかった。もう、母は母ではないのだと再確認したようで辛くなった。
帰路、とても疲れて歩くのも面倒だった。明日は自分の通院なのに気分が落ちていた。