腸閉塞の疑いで

昨日の夕焼け

午前中、妹からメールが入っていた。
仕事中だった私は午後になって気がついて遅い昼休みに電話した。
たまたま妹が実家に泊まる予定だったらしいが、父の腹部が膨れて腸が詰まった状態で危険らしい。
母は一時的に特養ホームで預かってもらい、妹が付き添っているが運ばれた病院では手術室に空きがなく、別の病院に搬送されるらしい。
転院先が決まったら連絡をしてくれるよう頼んで、午後の仕事に入った。
集中できなかった。
母の入院の時の悪夢が蘇ってくる。
私は必死だった。なりふり構わず、母のために尽くそうとして、空回りした。その結果、何度も倒れた。持病が悪化して薬が増えた。夫婦関係が冷え切ってしまった。
いま、妹がひとりで父母を看ているのが心苦しかった。だけど、またあの時のように、情にのまれてはいけない。妹は冷静だ。出来ないことはしないし、頼まれてもしない。この場は妹に任せてお互いに負担にならないようにするのが得策だと思う。
父に対して私は特別な感情が湧いてくる。どうしても許せない事があって、それは大人になっても消えることがなく、心の底に溜まっている。父が何か事を起こすと、それが水の中の泥のように心を濁らせ不安をかきたてる。
父とは距離をとって関わりたいといつも思っていた。それでも、入院となると、嫌でも距離がはかれなくなる。父は無遠慮に自らの感情をぶつけてくる。それを体で受け止めなくてはならなくなる。
そして無邪気に子供のように笑う母をひとりにはできない。
この局面、どうするか…。
夕方になって、妹から電話が無いのでこちらから電話した。父は転院した後だった。妹は入院の準備に追われて連絡を忘れていたと言った。妹と話しているとお互いの姿勢の違いにあきれるほど距離を感じる。そのうち噛みあわなくなってきて、お互いいらいらしてくる。妹が感情的になってきたので私は電話を切り上げた。その時、「今日は頼んだよ」と言ったが、「頼まれたくない」と妹は返した。多分、本音だろうと思った。そのぐらいでいないと、この危機を乗り越えられないだろう。私はそういう所でいつも躓いてきた。
妹との連絡はメールに切り替えた。
ここで無理をしてはいけない。また倒れて自滅するだけだ。
明日は会社に行く妹と交替で、私が会社を早退して父の様子を見に行くことにした。
弟には妹のメールを転送した。
帰ったら、夫が暗い表情をしていた。
また同じ失敗を繰り返してはいけない。
無理をしないで普段どおりに、どんなに尽くしてもなるようにしかならない。
落ち着け、と自分に言い聞かせた。