そして彼女は去っていった…

しろつめくさ

1ヶ月前入社したばかりの彼女が、やはり辞めることになった。
隣の部署で緊急ミーティングが開かれた。
それは、私の人事にも関わる会議でもあったから、私は朝から動揺が隠せず、データのミスタッチを何回も繰り返していた。
あの時、私がもっと彼女の不安や不満を受け止めていたら、彼女はここに留まっていただろうか。多分、彼女の心の内を一番最初に知ることになったのは私だった。その時、何か出来ただろうか…。彼女は確かにSOSを発していた。社内でも同僚から離れたところにいた。自分の所在が心もとなく、孤独で、不安だったに違いない。
この1ヶ月…彼女のことは社内の誰にも話さなかったけれど…それで良かったのだろうか。
彼女の上司にそれとなく話して対処してもらった方が良かったのだろうか。
今となっては、分からない。
退職の挨拶もなく、定時になると彼女は荷物をまとめ、上司と少し立ち話をして、静かに去っていった。同僚も何も反応しなかった。
そして、席が1つ空いた。その席に私が就くはずだったが、事態に急展開があったのだった。