それでも前へ進むしかない…

あじさい

今の仕事にもやっと慣れてきた矢先、部長に呼ばれた。
別室に案内され、面談…。
「実は隣の部署で辞める人が出るので、一時的に仕事を移ってもらうことは可能ですか?」
とうとう来てしまった。異動の打診。
すぐ結論を出さなくてはならない場面だった。異動先は現場の最前線。待っている患者さんがいる。仕事を止めることはできない…でも、私に耐えられるだろうか…。
「私で勤まるでしょうか?医療の知識も乏しいのですが?その辺が不安です…」
「システム的なことはすぐ対応できます。むしろマニュアルがあるから、あなたなら大丈夫だと思いますよ。今社員を募集しているのでその間だけでいいのですよ。どうですか?」
私は、少し考えて、前に進むことを選んだ。それしか、選択肢はなかった。
「わかりました、お受けできます」
「よろしくお願いしますね。現場は止めることは出来ないのでね」
「いつからになりますか?」
「来週から…」
あと3日。それまでに心の準備が出来るだろうか。
返事はしたものの、動揺して仕事が手につかない。頭の中で考えがぐるぐるまわっていた。
彼女が辞める…そして、私があの席に座るのだろう。
本当に出来るのだろうか。そして、新しいスタッフと上手くやれるだろうか…。
主治医と話がしたくなった。こころの中で主治医なら何と言うか考えていた。
契約更新の手続きは進んでいる。もう後戻りは出来ない。
先生に「大丈夫ですよ」と微笑んでもらいたい。
身体がかすかに震えている気がした。