リタリン投入

フロックス

眠れなかった。新しい環境への不安が高ぶって気分が興奮状態になっているようだ。
でも、寝ないといけないと何度も中途覚醒しながら、びっくりするほど寝汗をかいた。
朝、朦朧とした状態で薬を飲み、急いでシャワーを浴びる。
普段なら、熱いシャワーで血圧が上がり、頭もはっきりしてくるのだけれど、今日はだめだった。朝の通勤電車の中で泥のような倦怠感におそわれ、何度も意識が遠のくような感じになる。
これでは、働けない…。
前回の通院で、主治医は処方を少し多めにしてくれた。通院までの期間が長くなるため、不足しないよう配慮してくれたのだ。特にリタリンは…治療にはならないけれど、今の私にとって必要な薬だろうからと、本当は減らしていきたい方針を曲げての処方なのだ。
働くことは生きること。
私は始業前、コーヒーショップでアイスコーヒーを頼み、処方量の倍のリタリンを飲み込んだ。
今日は朝から急ぎの仕事が立て続けに入り、電話も鳴りっぱなしだった。この忙しさを乗り越えるにはその薬が必要だった。
罪悪感がない訳ではない。だけど、働けなくて死にたくなるより、働けて生きる希望をつなぐほうが今は大切なのだと思う。
「緩んだねじを毎日締めなおすような生活」
うつ病の患者がリタリンを使って無理やり働くことを主治医はそう例えて言った。
だから、いつかは自分の力で働いて生きていかなくてはいけない。
だけど今は…いいですよね?先生…。
私は薬の力を借りて今日も仕事を無事終えた。
不眠や幻覚に注意しながら普通のひとのように振る舞おうと努力しています。