青空

昨夜から殆ど眠れず泣いていた。アモバンは飲まなかった。母の気持ちを強制終了するなんてこと私には出来ない…
朝、だるい身体にリタリンを投入して朝食の時間を取り繕い、夫を送り出すとまたこみ上げて来る悲しみが涙になって溢れてきた。目が腫れて青ざめた自分の顔が鏡に映っていた。
洗濯物を干したり、掃除機をかけたり、何かする度に母との思い出が頭を駆け巡り、小さな後悔が大きな悲しみとなって午前中は結局ずっと泣いていた。
もう誰かの助けが必要だと思った。
昼食を食べる気力も無く、母の好きなレギュラーコーヒーを淹れて薬を飲んだ。
主治医のことを想った。緊急コールをしようかと迷った。このままでは私は駄目になってしまう。。。
良い天気だった。部屋に午後の日射しが満たされ明るい青空が見えた。
主治医の年賀状のバラのつぼみ…真冬の寒さに耐えて美しい花を咲かせる。
外に出た。前の住人が植えたバラの木に固く寒さに耐えながら青空を仰いでいるつぼみがふたつ。
冷たい風が建て込んだ住宅地のすきまを素早く通り抜けていく。
電話をするのはやめた。
この悲しみはいつかは忘れてしまうかも知れない。悲しみを味わう時間がこの先無いかも知れない。
穏やかな午後の青空の下で思った。このバラは咲くことが出来るだろうか。
先生、どんな意味をこめてあの葉書を下さったのですか?