主治医の異動

病院の受付で

今日は会社を休み、婦人科の検診と心療内科の受診でした。
婦人科では8月に検査して再検査になった子宮体がんの検査を受けました。同時に卵巣の超音波も見てもらいましたが、腫れはそのままで、腫れてはいるけれど大丈夫とのことでした。子宮体がんの検査結果は郵送で送ってもらうことにしました。
それから夕方の心療内科の予約までには時間があったので、病院の食堂で軽食をとり、今日主治医に話す内容を考えていました。今年最後の診察なので、自然とこの1年を振り返っていました。空き時間に書こうと思って持ってきたクリスマスカードを書く気持ちは起きませんでした。なにかしようと思っても手につかない不安定な気分になりました。
予約時間にはもう日が暮れて、待合も暗く寒々とした感じがしました。けれど時間がずれこんで待っている患者さんが2人いました。前の方が1時間近く話しているのだと聞きました。その時、なんとなく予感がしました。暫く待つだろうと考えた私は一度ロビーに戻ってコーヒーを飲みました。多分、私は最後だろうと思ったからです。
暫くして待合に行って見ると、待っている患者さんが1人に減っていました。と、その時、診察室のドアが開いて、患者さんが出てきました。「先生が3月でここを辞めるんだって。もう会えないからさ…」その年配の女性の患者さんはそう言いながら荷物をまとめていました。私は一瞬凍りつくような気持ちになりました。ついに…主治医がこの病院を辞めてしまうんだ。それで、患者さんとの話が長くなっていたのだと思いました。
主治医は待っているもう1人の患者さんより先に私の名前を呼びました。慌てて私は診察室に入りました。
主治医はいつもと変わりなく、今月はどうでしたか…と尋ねてきました。私は心の奥に不安を感じながら、この1年仕事が続けられたこと、当初の目的は達成できたけれど、私をとりまく環境は良くはなっていないし何も解決していない、仕事だけに力を使い果たして、何も出来なかった。と話しました。
主治医は笑いながら、「この1ヶ月ではなく1年を振り返ってしまっていますね」と言って、薬の効き具合などを確認しました。先月からSSRIを止めていました。多少は眠気は解消されているような気がすると話しましたが、本当に私にはもっと薬が必要なのか否かよくわからないと伝えました。ただ、最小限の薬でもなんとか仕事は続けられたので、大丈夫なのだろうと思うとも話しました。話しながら、私は薬がなければ仕事も出来ないのだろうとも思いました。感情が平板になり、苦しくても悲しくても泣けませんでした。逆に本当に感動するようなこころの揺れも感じませんでした。それは日常生活に支障があるから、薬で抑えているのだから仕方の無いことだけれど、1年を振り返れば、ただ仕事に行くエネルギーを薬で補充しているだけだったように思いました。
仕事は来年3月まで更新になりました。その先はわからない、と話しました。
主治医は処方箋はとりあえず先月のままで不足なら手持ちの薬を使うように指示しました。
私は主治医が異動の話を切り出さないのを不思議に思って、私から尋ねました。
「先生、さっきちょっと話を聞いたのですが、この3月でこちらをお辞めになるのですか?」
すると主治医は、微笑んで、「診察の間隔が長い患者さんにはお話しているのですが、本当は来年になったらお話しようと思っていたのですが…」と答えました。とても楽しそうに微笑むので、新しい臨床の場に身をおくことが主治医にとっていいことなのだと思えました。
来年4月まではこの病院にいて、その後は新しい場所で診療を続けるのだそうです。患者さんの反応はいろいろで、この病院に残ると言われる方もいらっしゃるのだそうです。私もずっと通いなれたこの病院から離れて別の病院に移るのは少し不安がありました。
「通えるかな…」と思わず口にしていました。
主治医は、今はどこに行くというお話はできないけれど、都内だし通えない距離ではないと話してくれました。その時の表情がとても楽しそうで、長く勤めた職場を離れる寂しさを感じさせなかったのでほっとしました。
転院した時のカルテのこと、自立支援法の変更手続きなど、いろいろやることはあるのだろうと思いますが、主治医を変えることは今考えられないので、異動についていこうと思っています。
最後に今年1年お世話になったことのお礼を言って診察室を出ました。外は真っ暗になっていました。