痛みを麻痺させたこころ

朝の桜

年度末。今まで一緒に仕事をしてきた仲間ともお別れ。同じフロアの派遣さんも契約終了。
ばたばたと引継ぎや異動の準備に追われるひとたち…。
慌しい雰囲気にのまれて集中力が失われ、勘違いや小さなミスを繰り返す。些細なことも確認しながら作業をしなくてはいけない。
ちょっとした勘違いを社員に厳しく強い口調で指摘されてしまった。
けれど私は何故だかこころが痛まない。辛いとか悲しいとか恥ずかしいとか何も感じずにただミスを詫びてその場を取り繕った。
それがショックだった。
私は健康な人よりストレスに弱い。普通のストレスに晒されても心身症を起こしたり、幻覚や感情障害を悪化させてしまう。だからお薬でストレスを感じないように感覚を麻痺させている。お薬はこころに頑丈なバリアをはって、辛い状況や悲しい気分が直接こころに届かないようにしてくれる。私は生の感情に触れることはない。いつもお薬に守られて気分は平静に保たれる。
でも、それでいいのだろうか…それで、幸せだろうか?
仕事を続けていくためには、うつ状態になって意欲が低下したり、意識昏迷になってありえないものが見えたりしてはいけないと分かっている。分かっているけれど、無理やり安定させられた気分で生きていると喜びも悲しみも直に味わうことが出来ない。
いま私はどんな酷い状況にあっても倒れないのだと思う。
だけど本当の私はぼろぼろになって傷だらけなのだ。こころが血を流してもそれが見えないし痛みも感じないようにされているだけなのだ。
すべては生きていくため。
一緒に働いてきた仲間との別れの寂しさも普通の人の半分くらいしか感じないまま、年度末の一日を終えた。
どうか、新しい部署で、職場で、お元気で…。