白粥

母が脳梗塞で入院した日からもうすぐ1年。父はずっと母をみてきて疲れもあるのだろう。夕食時も胃が痛いと言って父は何も食べなかった。
母は家に戻ってから随分落ち着いてきたが時々見当違いの事を言ったりする。仕事と家事をしなければならない父は母ののんびりした態度に時々ヒステリーを起こして怒鳴りつけてしまう。
私は父の愚痴を聴いて「心配だね、病院で診て貰った方がいいね」と日頃の苦労を労うように言葉を返していた。
何も食べたくないという父に母がお粥を作ってあげてと私に言った。父ははじめいらないと言っていたが仕事から帰って何も食べていないのだ空腹に違いない。私が作るからと用意を始めたら父も意地を張らなくなって私に任せてくれた。
即席の白粥を作った。薄いだしをいれたただの白粥。父はそれを梅干で全部たいらげた。
1年前、父の食事は母が作るものだった。仕事から帰れば何も考えずに夕食を食べることが出来たその生活が180度変わってしまったのだ。時々は誰かの作ったご飯を食べたいと思うこともあるのだろう。
私は複雑な気持ちで台所に立っていた。父の期待に全て応えていたら私は壊れてしまう。時々父の不満や怒りに付き合うくらいが丁度良いのだろう。心配してばかりでは私の心も疲れてしまうから。