夢と現実

昨夜はあまり眠れなかった。デプロメールの副作用で吐き気がする。腸の調子も悪くなってきた。
夫は今日もあまり話さず、私の質問にも答えなかった。朝食を食べ終えると着替えて出て行こうとする。
「何処へ行くの!」
私は慌てて夫に尋ねた。夫は無表情で「仕事…」と呟いて出て行った。夫のリュックに無理やり携帯電話を入れた。電話なら…話が出来るかも知れないから。
昨日帰ってきた夫は疲れきった表情をしていた。私が不安で泣き出すまで普通に小鳥と遊んでいたのに…私が夫の夢も希望もぶち壊し将来の不安を増幅させてしまったのだ。私のせいで…。
こんなことは何度かあった。夫はしばらくすると戻ってきて一晩寝ると忘れてくれた。けれど今度は決定的に何かが崩れたのだと思った。夫の我慢も限界に達したのかもしれない。
本当に辛いのは、夫なのだと何故私は気づかなかったのだろう。
この半年、母の入院や退院で家事もろくに出来なかった。それでも楽天的に日々を穏やかに過ごそうと努力してくれていた。家族の揉め事があっても黙って聴いていてくれた。私の苦しみを受け止めてくれていたのに…なのに私は自分のことばかり考えていた。夫が苦しんでいることも気づけなかった。なんて馬鹿なんだ私は。
失業して不安にならないひとは居ない。夫なりに自分の行く道を模索して夢を見ながら現実の厳しさに悩んでいたに違いない。
夕方、夫の携帯にコールしたら電源が切れていた。
夫は日雇いのような仕事を夜遅くまでしているのだと思った。
どこにいて、何をして、何を思っているのだろう…傷ついた心を抱えて。。。
私はこれからどうしたら良いのだろう…就職情報誌をめくってみる。今の仕事を手放して毎日働けるように頑張れるだろうか…。今の仕事…手放したらもう何もなくなるかもしれない。
夫はまた深夜に帰ってきて風呂に入って上がるとすぐに寝室へ行ってしまった。食事はいらないと言った。
たった一度の発作で夫婦の我慢は臨界点に達してしまったのだろうか。私は自分を責めるしかなかった。眠れない夜は続く…。