[介護][こころ]私が死んだら…

駅前で花を買って母のお見舞いに行く。昨日妹は土日が空いているのでお見舞いに行けると言っていたのに来ていない。電話した時は今から行くと言っていたのに…。
私は母の歩行訓練をしようと思って、失禁しているのに気づき、処理をしていたら時間がなくなってきた。ベッドサイドには汚れたタオル類が床に放置されたまま。
朝はリハビリをしたと言っていたから、コーヒータイムにしよう。
母は同室のT字杖で歩行できる患者さんから、四足杖を持っていることを馬鹿にされたと愚痴を言った。こんな所、早く出て行ってやりたいから、左腕が痺れても医師に言わないでいるとも言った。
私は薬を飲む時間になっていた。ランチ用に買ってきたサンドイッチを食べながら薬を飲んでいく。アモキサンセパゾンリボトリールデパスデプロメール、ケルナック、ペンタサ…
「神経用の薬?」と母が尋ねる。「脳を元気にして身体を動かす薬」と私は答える。「そんな沢山薬飲んだら身体が持たないよ…」「飲まないと身体が動かないよ。ここにも来れないよ」「…」
どうして、妹は来ないのだろう?どうして弟は中国へ行くのだろう?どうして母を見舞いに来ないのだろう…私は、何でこんな大変な思いをしてここに通うのだろう?
「ねぇ、どうしてみんな来ないの?」「さぁね。忙しいんだろう」「私も忙しいよ。でも来ているよ」「○○ちゃんは頼りにならないから…」
「私さあ、みんなより早く死ぬと思う。そうしたらみんな動くよね?」
言ってはいけない言葉を母に投げつけてしまった。私は言葉を発してから後悔した。
「家族が早く死ぬのは困る…」
母は外の川を見ながら私のほうには振り返らずにそう言った。
生きていたい母と死んでしまいたい私と。
川を泳ぐカモに小さな男の子が石を投げつけた。驚いて飛び立つカモたち。
「酷い子供も居るもんだ…」
母の前で愚痴を言ってはいけない。父が他の患者さんの前で大声で愚痴を言うのを母は苦痛に思っているのに、私まで愚痴を言うなんて。
帰りに駅前のデパートのティールームで、少しゆっくり紅茶を飲んだ。気持ちが荒んできている。もっと大らかにせめて心だけでも豊かに母に接していかなくては駄目になる。
帰路、電車の中で気を失いそうになる。疲れている。本当に倒れてしまう。どうしても消えてしまいたい衝動が抑えられない。
何故みんな母に会いに来ないの…