遠距離介護デビュー応援ブック

母が倒れてしばらくして将来的に在宅介護が必要な身体になってしまったことが明るみになるにつれ、周囲の人たちは私が実家に戻って介護をするべきだと言い始めた。職場では近隣に引っ越せばとか、同居が嫌でも今より近いところに移ればとか、3時間の距離は遠いし身体を壊すとか。夫は仕事を実家の近くで探すから母の介護に専念すればと言う。家族は言葉では何も言わないけど、パートタイマーの私に母を看てもらいたいという態度を見せる。私は苦しんだ。私は実家が嫌だ。もう帰りたくない位嫌いなのだ。そして家族とも分かり合えないと思っている。そんな私に「介護は大変だよ。遠くては無理だよ」と多くの人が囁いていく。私は今の生活を急に変えたくない。引っ越したくない。病気もきちんと治したい。分かり合えない家族とは距離を置きたい…。そんな私の考えを肯定する人は居なかった。私の主治医ただひとりを除いては。
主治医だけが私の無謀な考えを支えてくれていた。急激な環境の変化への不適応、一人で在宅介護を被ることの危険性、治療の中断の危惧…私が壊れないようにするためにベストな方法は「遠距離介護」だと思った。
今日、書店でこの本を手に取ったとき、思わず泣きそうになった。「遠距離介護デビュー」なんて軽やかな言葉だろう。そしてその本のイラストを書いているのは偶然にも友人のイラストレーターさんだった。暖かなふわりとしたイラスト。去年個展に行った時には既に母は入院していた。私は彼女のイラストに描かれた幸せそうな家族の姿が羨ましくて、帰り道涙が溢れたことを思い出した。
親と同居して一日中介護をするのはとても大変で立派な事だと思う。だけど、同居しないで暮らすのがベストな家族だってある。同居しないからって愛情が薄いわけじゃない。介護にはそれぞれの家族のやり方があっていい。
この本にはいろいろ工夫して遠距離介護を実践している人たちの声が収録されています。いいことばかりじゃないけれど、同じように悩む人たちに人間関係、社会生活、福祉サービスの利用などのアドバイスが詰まっています。情報は古いのですが説教するのでなく、応援しようという明るさが心を軽くします。
なんか運命を感じます。私も遠距離介護デビューしようと心に決めました。
先生、私、出来るような気がしてきました。どうか見守ってください。

遠距離介護デビュー応援ブック―老親との対話できていますか

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