病棟の雰囲気

回復期リハビリ病棟には、脳神経外科以外の整形外科や神経内科などいろいろな科の患者さんが入院して、機能を回復するための訓練をしている。だから母のように運動機能に麻痺が無かったり、精神的に健康な患者さんもいる。そういう患者さんたちは元気で、少し遠慮して欲しいくらい活発に動き回っていて戸惑った。
食堂で母のリハビリを見学していたが、少し痴呆がある患者さんやどう見ても抑うつ状態にあると思われる患者さんがぼんやりと車椅子に座っているのを見て、やはり…と感じた。作業療法士さんも、理学療法士さんも、看護師さんもそれなりに患者さんに声掛けをしたり、困ったことはないか聞いてくれる。でも、ルーティンの中での話しだ。今私が気になっている患者さんたちには精神的なケアが必要だと感じる。抗うつ剤を処方すればそれで良いのではない。心の問題を専門的に診るひとがいて、初めて薬は効果をあらわす。微動だにせずぼんやりと宙をみつめる男性の目の曇りは、母の表情にも感じられる。諦めたような寂しげな空気…。
リハビリテーションに、精神科は関与すべきではないのだろうか。それは間違った考え方なのだろうか。私が一般診療科を受けながら心療内科医にコンディションを管理してもらっていることは、ある意味恵まれているとは思う。ただ、この病棟の雰囲気を見て、痴呆やどう見ても精神障害をきたしていると思われる患者さんがぼんやりと、あるいは途切れなく独語をしているのを見て、これでいいのだろうかと疑問に感じるのだ。担当医師は、自信を持って精神科医より症例を多く経験しているから対応できると言った。それが、この状況なのか。とても不安になった。私は間違っているだろうか。