作品の仕上げを手伝ってもらっている夫から、「何て気が利かないんだ!」と怒鳴られた。昨日の指示をきちんと理解していなかった私が全面的に悪いのだ。でも、その言葉は痛かった。
幼いころ、父親に妹と比較され何度も何度も言われた言葉…
それは深夜に及ぶこともあった。
怒声を上げる男とは生活を共にしたくないとずっと思っていたのに、今の生活は幼いころと変わっていない。
私は声を失い、感情を失い、泣くことも叫ぶことも出来ず、淡々と夫の怒りを受け止めていた。
心の底に悪い考えが浮かぶ。それはこの場から逃げてしまうこと。
逃げちゃいけない。考えて、考えて、楽な方向に向かう心を制御しなくてはいけないのに。今私は消えたいと思う。
何故人は怒りをぶつけるのだろう。怒ることで現実を飲み込もうとしているのだろうか。だとしたら、ぶつけられた相手は、傷ついた相手は、どうしたらいいのだろう。
私は昔の傷と同じところを切り付けられて、たくさん血を流している。それを無感情に眺めている。
ふと、ひとりになりたいと思った。