電話を取るのも掛けるのも、すっかり苦手になってしまった。会社を退職するまでは、電話は取るのも掛けるのも頻繁だった。何がきっかけだったか思い出せないが、徐々に怖くなった。相手の顔が見えない気楽さが、かえって恐ろしさに変わってしまった。
通院するようになって、一度だけ主治医に電話をしたことがある。予約時間の変更の件で。でも躊躇しているうちに主治医は帰ってしまって電話は通じなかった。実はその日、発作的に会社の窓から飛び降りたい気分だった。電話が通じていたらそうしていたかも知れない。それから、一度も主治医に電話をしたことはない。
今日は、展覧会の搬入まで日がないので、配送の予約をするため、しぶしぶ電話帳を見ながら電話を掛けた。2件断られへこむ。宅配便のサービスセンターに電話をしたら、とても親身に相談にのってくれて、依頼の裏技を教えてもらい、配送を引き受けてもらえることになった。こんな話下手の電話を受ける側も苦労が多いだろうと思った。話をしすぎて疲れてしまった。