視線、仕草、声…

夕方のばら

仕事が忙しく、残業が増えている。
そうすると、追い詰められたこころが、周囲の色々な物事を過剰に気にしだしておかしな妄想をはじめてしまう…。
夫とのすれ違い生活が長くなり、それも気になっている。
会社にはとてもふくよかな女性社員がいて、今度の座席の移動で彼女と向かい合ってデスクを並べることになった。彼女はとても朗らかでいつも感じが良い人だ。嫌いな人ではない。
けれども、彼女と向かい合って仕事をするようになって、彼女が常に何かを食べたり飲んだりしているのを嫌でも見てしまうことになった。
過食症状を抑えようとしている私は、その彼女のひとつひとつの仕草や声や食べる場面を目にする度に、自分が過食を繰り返し太っていくような妄想を抱いてしまう。
彼女のことが嫌いではないのに、見ていると苦しくなる。
そうして、時間に追われながら仕事をしていると、段々周囲の話し声やスタッフの足音や、電話の音や、外の景色さえ、こころを乱す元になっていく。
本当は安定剤でゆったりとしたこころを取り戻すべきだと思う。
これ以上我慢していると幻覚が現れてしまいそうだ。
けれど、素早く仕事を処理しなければ、私は、そういうために雇われているのだから。派遣社員としてしっかりと仕事をまっとうしなければいけないのだから。
夫は太った女性が大嫌いだ。私が太っていくのをきっと悲しんでいるだろうと思う。
ああ、だけど、私はどんどん醜くなっていくような気がしてならない。
これは妄想。しっかり自分を意識して、食事をコントロールすれば良いことなのに。それが出来ない気がする。
自信がなくなってきている。何もかも。