私を生きるために



その片手を離す*1からの連想です。


父の日の贈り物を選びに夫と街へ出た。
適当にポロシャツを選んでラッピングして配送してもらうことにした。
念のため、職場にいる父に電話して配送時間を確認した。
父は…父親と介護者としての役割に目覚め、私の贈り物をとても喜んでくれた。
私の気持ちは複雑だった。
もっと早く、そう、私が子供の頃にそうあって欲しかった…。
過去は戻って来ないけれど過去に縛られている自分がいた。
私は時々倒れてしまいそうな倦怠感に襲われつつ、
娘としての役割から逃げ出したい衝動を抑えるのに必死だった。
暗い表情をして明るい声で電話を切った。
それを見て夫もまた表情を曇らせる。


ひとは色々なものに縛られて生きている。
何通りもの役割を無意識に使い分け生き延びようとする。
ある時ひとは病み、その役割を維持できなくなることがある。
その時ひとはどうするのだろう?


私は何を手放したら生きていけるのだろう。


気分が悪くなった私はひとりで喫茶店で休んでいた。
暗い表情をした夫が用を済ませてやってきた。
夫にはいま、仕事がない。
夫もまた、夫としての役割から逃避したいのだろう。
私はそれを許すことが出来ず、また自分も許すことが出来ず…


夫は落ち込んで、一人で帰り寝込んでしまった。
私も一人でふらふらしながら夕食を買って泣きながら帰った。


私は何を手放したら生きていけるのだろう。


過去の思い出やしがらみが私を縛っている。
全てを切り離し手放して落ちていったら死ぬのだろうか。


泣きながら小鳥をかごから出してやった。
彼は翼を持っていて、隙あらばいつでも空に帰れるのに。
何でここに留まっているの?


心に翼があったらいいのに。
手放しても飛べるのに。
落ちても生きている私はもう死んだのに気づいていないのかもしれない。