歩行介助許可

早めに家事を片付け、コーヒーをポットに詰め母の病院へ急ぐ。いつもより1時間早く家を出た。
病院に到着すると、案の定母はベッドに寝ている。「こらっ、起きて起きて!昼間は座ってる約束でしょ」と言って母を起こしベッドの端に座らせる。四足杖がもう届いていた。まだ介護保険が下りないので1ヵ月1500円のレンタル。保険適用ならなんと50円なんだそうだ。早く介護保険が下りないといろんな装具にお金がかかって困る。遅れているのは主治医の意見書がまだ役所に届いていないのが原因なのだ。病院の中心で「意見書!」と叫びたい気持ちだ(苦笑)
母は早速トイレ介助を頼む。車椅子移乗は見守りなしの許可が出たそうだ。身障者用トイレへ運ぼうと思ったが、ふと病室のトイレでも大丈夫かもと思い、「ねえ、ここのトイレ使ってみようよ」と母に聞いてみる。「それでもいいよ」と言うので病室の狭いトイレに車椅子を入れ、母が立ち上がった所で狭いので車椅子を外に出す。ドアを閉め、トイレ介助見守り。出来る!十分手足の力がついてきてる。これで身障者用トイレの前で待ってる間に失禁してしまうこともない。
トイレが済んでコーヒーでも飲もうかと話していたら、担当の作業療法士さんが訪ねてきた。ちょうどリハビリの時間だったようだ。家族が来ているということで、四足杖の介助を私がして4階のエレベータまで誘導し、1階のリハビリ科まで歩行介助をしてみた。作業療法士さんは私の介助を見て、「大丈夫ですね。これからはご家族といる時はなるべく杖を使って食堂や談話室に行くようにしましょう。ナースステーションにもそのように伝えますね」と言ってくれた。私の歩行介助にOKが出た。少し嬉しい。
その後、いま訓練中の階段昇降のリハビリを見た。昇りはなんとか介助ありで行けそうだが、降りるのはかなり困難そうだ。麻痺側の足がどうしても内側に入って転びそうになる。かなり危険が伴う。あと1ヵ月、出来るようになるだろうか。
リハビリが終わって、いつものように川のカモを見ながらコーヒータイム。最近はカモを観察できるように双眼鏡も持参している。よく観察すると地味なカモでも綺麗な黄色い飾り羽があったりしてかわいい。
母は週末の連休に外泊したいと言っている。それが楽しみでリハビリを頑張っている。外泊出来ると思っている。現実は無理だ。今回は諦めてもらうしかない。でもなんとなくはっきり出来ないと言えなかった。妹も休みだから大丈夫みたいな事を言ったらしい。早く退院したい。家に戻りたい気持ちは痛いほど分かる。でも今の状況じゃ無理なんだよ。お金も無いし保険も下りないし人手も足りない…。ごめんねと心の中で唱える。
母が夕食を摂っている間にベッドサイドを片付け、洗濯物をまとめ、花を生けた。戻ってきた母は普段着を着ていたので、パジャマに着替えさせた。私の買ったシャーリングの入った薄手のカットソー、気に入ってくれたようだ。「この位薄いのがいい」と言っていた。もう春だから、安くて可愛いのを今度来るときに持っていってやろう。
帰りの父の車の中で、母の外泊の事を相談した。父は諦めてもらうしかないと言った。休日は父は忙しく玄関前の階段歩行介助に付き合えない。私一人の力では体重差20キロを支えるのは無理がある。妹は頼りにならない…。それでも、昼間だけでも家にいてもらう事ができたらなあと思って切なくなる。お昼ごはんだけでも自分の家で食べてもらって、好きなだけコーヒーを飲んで、内緒で甘いお菓子も少しだけ一緒に食べたら…母のストレスも少しは解消されるのではないだろうか。良い考えが浮かばず、駅に到着。父は何かあったら連絡すると言って別れた。