あと2ヶ月

今日は母の主治医の入院経過説明の日で、私と父が病院に出向いた。
私は少し早めに病院に行って、母のリハビリに参加した。現在母は杖なしの歩行の訓練をしている。作業療法士の方から、歩行介助の仕方や転びそうになるときの見分け方、休ませ方などを教えていただいた。父も来ていたのだが、遠巻きに見ているだけだった。本来は父がこれを学ばなくてはいけないはずなのに…。父よ私は病気なのだよ。いつも母の側には居てやれないのだよ。子供は私だけではないのだよ。もっと母の介護に興味を持って欲しい。けなしてばかりいないで母を励まして欲しい。私はいつまでも生きているとは限らないのだよ。父よ…。
リハビリが終わった後、今回は母も交えて主治医の説明があった。
回復期リハビリ病棟の入院限度は180日。つまり6ヶ月以上は入院できない。リハビリが途中であっても退院しなければならない。主治医はぎりぎりの6ヶ月いっぱいまでリハビリをやってみましょうという見解を示した。血圧を除いては体調管理も良くなっている。これで、順調にリハビリが進めば屋外の自力歩行も可能になるかもしれない。
母はあと2ヶ月も家に帰れないことに落胆し、私たち家族はあと2ヶ月しか猶予が無い事に慌てた。
母は病状と全く関係ない、病室内の人間関係についての苦情を繰り返し訴えた。それはその場の話題から的を外れていて、それだけに母の壊れ方が際立って切なかった。
帰り際、私は父にあることを頼まれたが断った。あまりにも軽々しく頼む態度に悲しくなった。
妹に電話した。父の依頼は妹が引き受ける事になった。私は無力感と絶望感に打ちのめされていた。私が生きていたって仕方がないような気がした。私が死んで生命保険が母に下りればそれで母は暮らしていける。私はもう苦しまなくていい。早く楽になりたい…
帰りの電車の中でいつの間にか泣いていた。周囲の人からは異様に見えただろうと思った。