平行線…

夫はカウンセリング当日になって突然花粉症が悪化した。マスクをしてくしゃみを繰りかえす夫はまるで患者のようで笑えた。夫も緊張してるようだった。
主治医は当直明けだったのか、かなりやつれた様子だったが夫を紹介してお互い挨拶をしてまず私の病状の経過を説明。その後、うつ病の一般的な症状と治療についての説明。主治医が一通り説明した後、夫の質問に主治医が答えるという形でカウンセリングが進む。
夫の質問は、うつ病とは本当に病気なのか。妻はうつ病ではなく、性格の問題ではないか。薬を長期間飲むことに危機意識を感じる。薬に依存して生活習慣を正すなどの努力を怠るのではないか。副作用については問題ないのか。一度服薬を止め、カウンセリングだけで治療をすることは可能か。妻は回復しているのか。傍から見ると全く治っているようには見えない。主治医から客観的に見てどうなのか。服薬は一生続くのか。減薬することは、中止することは出来ないのか。治療は今後も続くのか。定期的に主治医に疑問を質問しに来ても良いか…等であった。
主治医は医師として医学的な説明をある程度まるめて答えていたように思う。図を書いてうつ病の発症や様々なケースについて説明もした。それは激しい口論を回避するために適切であったと思うが、白黒はっきりさせたい夫にとっては曖昧で煮え切らないように感じただろうと思う。主治医の側でも執拗に服薬を止めさせたい、治療を止めたいと訴える夫に対して逆転移を体験していたかもしれないと思った。
当初の打ち合わせどおり、双極性障害統合失調症の疑いについての話は複雑になるので割愛された。主治医の最初の家族カウンセリングとしてはそれで良かったと私は思った。
結局、対話に接点は見出せず平行線のまま、今後半年なり期間が経過した時に病状についてまた夫から質問させてほしいということでひとまず終了となった。1時間近くの時間が経過していた。
ひとつひとつの質問に主治医は丁寧に答えていたが、それが病気や服薬の必要性についての理解に繋がらなかったのは残念だった。ただ、私にとっては自分の病気について客観的に見る良い機会になったし、主治医が私の病状や経過をどう評価しているかということを言葉で聴くことが出来たのは偶然とは言え収穫だったと思った。治療を止めさせられないかと詰め寄った夫に、主治医はきっぱりと「治療は(今後も)続けます」と答えてくれたことが私を励ましたし、「どんな局面で症状の悪化が起こるのかいくつかの気づきがあったことが治療の成果です」と言われたことは主治医との信頼関係を強くしたと思う。
カウンセリングが終了した後、夫はかなり抑制して話したこと、セカンドオピニオンをとってほしいこと、激しい口論をすると私が泣くと思って気を使ったことなどを話してくれた。夫には精神障害の妻を持って心身ともに負担をかけている。会社を休んでこの場に来てくれた夫に感謝したい。
帰宅して夫婦共々強い倦怠感に襲われ、夫は眠り込んでしまった。私も少し横になった。家族カウンセリングとは物凄く消耗することなのだと思った。夫の状況を見て早めに時間をとってくれた主治医の疲労も相当のものだろうと思う。お世話になりました。どうかゆっくり心身を癒せることができますように。
2日後、今度は私の診察の予約が入っている。