琳派 RINPA展

尾形光琳「松島図屏風」

久しぶりに近代美術館に行ってきた。今話題の「琳派 RINPA」展にちょっと興味があったので。実は学芸員資格は日本近代美術史関連で特殊講義を取って取得したもので…。専攻も日本画ですのでやっぱり新しい趣向の展覧会は見たほうが良いなと重い腰を上げたわけです(笑)
これから観に行く方も多いと思いますので、解説は避けますが、まず雨の日にも関わらず人が多くて、絵巻みたいな水平に寝かして展示する作品は人ごみを掻き分け観る感じで、結構美術愛好家って多いのだなと改めて思ってしまった。あと閉館が午後5時なので、すごく焦って観てしまうのでしょうね。金曜日は夜8時まで開館しているので、そういうときにゆっくり観る方が良いかと思います。
この展覧会は、琳派宗達とか光悦が有名ですね)から展示を始めないで、まず、象徴派のクリムトの作品と琳派の見出した美の元祖である尾形光琳が並んで展示してあるんです。そこからも、この展示が近代の日本、世界の美の潮流の一派をユニークな視点からきってみた、ちょっと実験的な、キューレータさんの冒険が感じ取れます。各章の展示の意図や作品解説もやや大きなフォントで短くまとめてあり、しかも表現が非常に平易なので親しみやすさも感じました。言葉遣いが若々しいというか…「アニメーションのような」とか「キャラクター」なんて言葉を近代絵画の形容に使うという発想は、とても近代美術館らしくなく、新鮮さと同時に、同世代感覚みたいなものを感じました。それは少し嬉しくて、でも近代美術館に居るという緊張感が失われていくような奇妙な喪失感も覚えました。
展示されていた作品の中では、小さな木版画ですが、神坂雪佳の「百々世草」(第1冊)のある頁、竹林の影からスズメが覗いているのが本当に愛らしくシンプルで好きでした。光琳の「槇楓図屏風」はなんかどこかで見たような気がすると思っていたら、母校の美術館所蔵でした。きっと何かの時に見た記憶があるんだろうな。絵を見た記憶というのは意外に忘れないものです。私は幼少の時から自分の4畳半の部屋の壁にルドンの花と少女を描いた複製画が貼られていて、喘息で眠れないときとか何も出来ないので壁のその絵を見つめていたりしていたので、すっかりルドンの絵に親しみが湧くのです。今回の展覧会では、象徴派の作品もクリムトなども含めて展示されていたのですが、ルドンの「オリヴィエ・サンセールの屏風」が出ていて嬉しかったです。淡く優しい色彩で草花が描かれていて、抽象的過ぎず、具象的過ぎず、装飾性は抑制されていてふわぁ〜とした空間が心地よく感じました。ルドンはその半生を苦悩の中で過ごし、モノトーンの世界で作品を表現していた作家ですが、晩年大病や若い感性との出会いなどを経験し、美しい色彩を使うようになったのだそうです。
展覧会の最後の章には、象徴派の作品のほかにも、琳派の装飾性、模写や引用、現代美術に通じる反復性などの視点から様々な分野の作品が並んでいました。その中にはマティスやウォーホルも李禹煥もあり、その中から琳派を探し出すのも楽しいと思いました。
常設展示も面白いものが出ていますので、時間が有れば是非そちらも観てみるといいと思います。
国立近代美術館
「琳派 RINPA」展 東京新聞のサイト。割引券がDL出来ます。