心療内科

先週話せなかった、睡眠障害などの症状と、帰省時の薬の調整を相談するため予約外受診。きょうは新患が多く、3時間待ちになりそうだと看護師さんから言われる。待つのは慣れてるし、消化器内科で緊張したのでのんびりコーヒーなど飲みながら順番を待っていた。
受付時間ぎりぎりに車椅子に乗った、明らかに自殺企図したらしい女性が家族に付き添われて受付に。左腕は包帯が巻かれ外科的処置は済んだ模様。呼吸が荒く、時々痙攣したように身体を震わせている。多分ODしたのだろう。見ていて痛々しく処置室のベッドで休んだらいいのにと思い、何度も声をかけたくなる衝動にかられる。看護師さんが見かけて診察の順番を聞きにいく。午後3時ごろになりそうだという。私は死にそうな人を見ると苦しくて神経がどうにかなりそうな気分になる。自分の診察の順番を聞きに受け付けに行ったとき、あと5人目であることを聞いて、苦しんでいるその人を先に診察して欲しいと申し出た。看護師さんは私に丁寧に礼を言い、主治医にメッセージを入れて確認するので少し待ってほしいと言われた。しばらくして、看護師さんから、主治医は順番に患者を診るとの返事が返ってきた。看護師さん2人は、私の厚意(偽善のように見えるが、その時は純粋にその人を早く診てあげて欲しかったのだ)に丁寧に感謝の言葉を掛けてくれたが、私は落胆した。余計なことをして主治医の仕事の邪魔をしてしまったと思った。事を起こしてから気づいても遅い。治療関係は受付から始まっているのだ。彼女だけ特別扱いにすれば、最初から治療関係が歪んでしまう。なんで、そんなことに気づかなかったのだろう。主治医は水際で治療関係に雑音が入るのを阻止したのだ。ああ、なんて馬鹿な私…
名前が呼ばれて診察室に入ると、主治医に余計なことをしたことを詫びた。主治医はそのことには何もコメントせず、かと言って険しい表情をするのでもなく、私が用件を話し出すのを待っていた。睡眠障害が酷いこと、何故か疲れにくくなってきていること、帰省するので活動的で居たいのでリタリンを使用したいこと、親戚が集まる席では幻覚が出るのではないかと思い、ルーランを飲みたいことなどを話した。
珍しく主治医は私の意見を否定した。「眠れないのがひっかかる」という。現在、うつ状態ではない様子だが、躁状態でもなく、このままだと躁状態に傾くだろうと思う。躁状態リタリンは禁忌。飲んではいけない。精神が不安定な状態でリタリンを飲めば、人工的な躁状態を作るのだから躁転する。また、幻覚が出そうな意識が混濁した状態でリタリンを使用すれば精神障害がかえって目立つようになって困るのではないか。今のまま、精神を鎮静させて過ごすのではいけないのかと問われた。
私は帰省時は、元気な自分を演出したかったのだと思う。いちいち落ち込んで塞ぎこんで泣いてばかりの自分を薬で変えたかった。でもそれは治療じゃない。甘えだ。躁転すれば他人にも迷惑をかける。今の処方で頑張ってみるしかないのだ。残念だけど主治医の意見に従うことにした。
主治医は「今日はお薬はいらないですね」と言って会計書だけ手渡された。今日の外来はすごいハードだ。主治医はまだ朝から休んでいない。この後も患者さんがたくさん待っている。「次回は、東京に戻ってきているのですよね。ではそのときまたお会いしましょう」と微笑んだ。こんなに疲れているのに笑えるなんて、なんて強い精神力なんだろう。改めて主治医を尊敬してしまった。そして、私の野暮な行動を問題にせずさりげなく危機回避をする判断力にも恐れ入った。私のカルテには「余計なお世話」が躁エピソードとして記されているに違いない(汗)でも、主治医に相談できて良かった。今の私に必要なことは安定と鎮静。注意深く、でも思いつめずに帰省をやりすごそうと決意した通院の一日だった。